第1話 薔薇の花嫁
プロローグ
「それは、むかーしむかしのお話です。あるところにお父様とお母様を亡くし深い悲しみに暮れる幼いお姫様がいました。そんなお姫様の前に白馬に乗った、旅の王子様が現れます。凛々しい姿、優しい微笑み。王子様は、お姫様を薔薇の香りで包み込むと、そっと涙をぬぐってくれたのでした。「たった1人で深い悲しみに耐える小さな君、その強さ、気高さをどうか大人になっても失わないで」と。「私たち、また会えるわよね」「その指輪が、君を僕のところに導くだろう」王子様がくれた指輪は、やはりエンゲージリングだったのでしょうか?……それはいいとして、お姫様は、王子様に憧れるあまり、自分も王子様になる決意をしてしまったのです。でもいいの〜?ほんとにそれで〜。
若葉「うーん、遅いなー
もー、いつまで待たす気かしらー!新学期早々遅刻しちゃうじゃない」
女子生徒「若葉ー!何してるの?そんなとこで」
若葉「ひひん。彼氏と待ち合わせなのさー」
女子生徒「彼氏?ははーん、あんた、振られたわね。彼氏ならとっくに朝寮を出たわよ?」
若葉「うっうっ、おのれ、ゆるさーーーーん!」
カツコツカツコツ
ウテナ「ん?」
先生「天上ウテナさん、あなたは新学期になっても、そのヘンテコな格好を続けるつもりですか?」
ウテナ「ヘンテコ〜?」
先生「ヘンテコ」
ウテナ「男子はみんな似たような格好してますよ〜?」
先生「あなたは女子!だから!なぜ男子の!制服を!着ているの!ですかぁーーーーー!」
ウテナ「うーん。女子が男子の制服を着ちゃいけないって校則はないなー。問題ないです。じゃ、そういうことで!」
先生「おのれ……新学期も誤魔化し続けるつもりだなー?」
キャーーーーーー
キャーーーーーー ウテナさまーーーーーー
男子生徒「あーあ。やれやれ。また完敗か」
キャーーーーー あー、ウテナさまー!私のタオル使ってくださいーーー
ウテナ「はいはい、順番にね」
男子生徒「ふふん。なあ天上?お前がうちのバスケ部に入ってくれたら地区予選は楽勝なんだけどなー」
ウテナ「あのねぇ、僕は女子!嫌だ汗臭い男子に紛れてバスケやんのはー」
男子生徒「いいじゃーん。男子みたいなもんだろう?天上は」
ウテナ「失礼なこと言うなよな?」
男子生徒「じゃあ、なんで学ランなんか着てるわけ?」
ウテナ「王子様だよ」
男子生徒「はぁ?」
ウテナ「僕は、守られるお姫様より、カッチョいいい王子様になりたいの!」
男子生徒「なんじゃそりゃ」
ウテナ「あ……この香りは。
薔薇の、香りだ。いつからだろう。薔薇の香りに懐かしさを感じるようになったのは
ん?あれれ、なんだ?痴話喧嘩かー?そーいうのは人の見てないところでやってよねー」
パチン!
ウテナ「おいおい。ちょっとやり過ぎだよー」
ガシッ
ウテナ「は、よかったー」
若葉「こらーーーー」
ウテナ「若葉、重いーーー」
若葉「さ、私をおいてきぼりにした罰よ!謝んなさーい!」
ウテナ「んあ、はいはいー。」
若葉「あら?西園寺様」
ウテナ「西園寺?」
若葉「知らないのー?西園寺様をー」
ウテナ「へー、有名人なんだ。
手前のやつは知ってるよ?確か生徒会長の桐生冬芽だろう?」
若葉「そ。で、もう1人の方が副会長の西園寺莢一様」
ウテナ「あの、女の子は?」
若葉「ん、ああ、姫宮アンシーよ?」
ウテナ「姫宮アンシー」
若葉「頼まれもしないのに薔薇の世話ばっかりしてる変な子。今日から私達と同じクラス。」
ウテナ「ふーん。西園寺って、あの姫宮って子と付き合ってんの?」
若葉「まさか!
硬派な西園寺様が、あんな子に関心を持つはずがないわ!同じ生徒会だから、一緒にいるだけよー」
ウテナ「若葉ってあーいうのがタイプなんだー。フーン」
若葉「もうやーねー、妬いたりしてー。心配しなくても、私はウテナだけのものよー?
だってだってもうその辺の男子よりずっとずーーとカッコイイんだから〜」
西園寺「急な呼び出しだねえ、生徒会の諸君」
幹「西園寺さん、僕たちは薔薇の刻印により選ばれたメンバーです」
有栖川「掟を守ることは、我々の唯一のルールだってことを、忘れるな」
桐生「西園寺、近頃お前の花嫁の接し方には、少々問題が」
西園寺「へー、そうなのかい」
桐生「確かに花嫁は今、お前とエンゲージしてる。だがそれは、節度なく好き放題していいってことじゃない。」
幹「好き放題」
有栖川「好き放題って?」
桐生「花嫁への、乱暴はよせ、西園寺。我々生徒会の存在は、世界の果ての意思だそのことを知れば、世界の果ても決して快く思うまい」
西園寺「ッフフフ、余計な御世話だ。花嫁は現在、僕とラブラブな関係にある。他人の君たちにとやかく言われたくないねぇ。」
ピッ
幹「ラブラブ……」
アンシー「私は今、西園寺様の花嫁です。全て西園寺様の思うがままです」
西園寺「まあ、2人はそういうことだ。そこまで、薔薇の刻印の掟に拘るんなら、掟通り、決闘で花嫁を勝ち取るんだなぁ。生徒会の諸君。」
桐生「すぐにも次の決闘があることを忘れるな」
西園寺「誰が挑んでくるか楽しみにしてるさー。ハッハッハッハッハ」
アイキャッチ
若葉「わー、綺麗ねー、薔薇の模様。ね、それって、うちの学校の校章?」
ウテナ「そう見えるよねー」
若葉「誰かにもらったの?」
ウテナ「白馬の王子様」
若葉「へ?」
ウテナ「この指輪が、君を僕のところに導くだろう」
若葉「なにそれ?」
ウテナ「確か、誰かにそんなことを言われてもらったような気がするんだけど、小さい頃だったからよく覚えてないんだ」
若葉「あるある、そういうの。私の子供の頃ね、ママに「あんたは玉ねぎ王国のお姫様よ」って言われて信じてたもんね」
ウテナ「昔からそういうおでこだったんだー」
ザワザワ
若葉「あれ?何かしら?」
ウテナ「なんだ?」
男子生徒「誰かのラブレターが貼り出されているんだってさー」
ウテナ「ラブレター?」
男子生徒「ええと、何々?「そして私は、夢の中で西園寺さんと踊っていました。あなたは優しく微笑んでいます。私って馬鹿ですよね」だってさー!ハッハッハハッハッハ」
ウテナ「馬鹿はお前らだ!」
ビリッ
ウテナ「悪趣味だからこーいうのは無し!」
男子生徒「貼ってたら読むぞ、普通」
ウテナ「こーいう場合、いい男は読まない!……あ
若葉……
若葉ー!」
若葉「ううっ、うっ……」
ウテナ「この手紙、若葉が西園寺に?」
ウテナ(許せないな。西園寺ってやつ!)
西園寺「知らないねぇ。大方僕の捨てた手紙を誰かがゴミ箱から拾って勝手に貼り出したんだろう」
ウテナ「どうして人目につくような場所に捨てた!」
西園寺「僕の手紙を僕がどう処理しようと勝手だろう。しかし、なるほどなあ。あんな馬鹿な、いや、愉快な手紙はみんなで使うのが一番の使い道だ
話しってのは、それだけかい?」
ウテナ「いや」
西園寺「ああ?」
ウテナ「あんた、剣道部の主将だってな。今日の放課後、僕と決闘だ!」
西園寺「なんだ、お前は?……そうか、君が次の挑戦者だったのか」
ウテナ「何のことだ?」
西園寺「わかった。放課後、学園裏の決闘広場で会おう」
ウテナ「森って、あの立ち入り禁止になってる森のことか?」
A子「かしらかしら、ご存知かしらー?」
B子「今日も裏の森でまた決闘があるんですってー」
A子「おー勇者さま、お友達のために戦う、お節介な勇者さま」
B子「でもでも、勇者さま?」
A子「これに掟があることを?」
B子「果たしてあなたはご存知かしら?」
A子「かしらかしら」
A子B子「ご存知かしらー?」
ウテナ「なんだよー。こんなところにどうやって入れって言うんだ?」
ガチャン(キラーン)
ウテナ「やっぱり、鍵がかかってるじゃないかー」
ピチョーン
ウテナ「冷たいっ」
ドオオオ
ウテナ「なんだ、この入り口は?
ともかく、入ってもいいってことだな!」
(♩絶対運命黙示録)
ウテナ「どうして空中にお城が?」
西園寺「よう」
ウテナ「は」
西園寺「あの城を見るのは初めてだったのか」
ウテナ「なんだ?あれは。あんなの森の外から見えなかったぞ?」
西園寺「蜃気楼の一種さ。ま、手品みたいなものだと思えばいいさ」
ウテナ「蜃気楼?」
西園寺「それにしても、生徒会以外にも君のように薔薇の刻印を受け取った者がいたとはな」
ウテナ「薔薇の刻印?」
西園寺「これのことさ」
ウテナ「その指輪」
西園寺「アンシー!用意しろ」
ウテナ「姫宮アンシー
姫宮、なぜ君がここに?」
西園寺「花嫁は当然立ち会うさ。決まりだからね」
ウテナ「花嫁?はっ(この香り……同じだ。あの人の薔薇の香りと)」
アンシー「この胸の薔薇を散らされた方が負けですから」
ウテナ「え?」
アンシー「頑張ってくださいね」
パンッ
アンシー「ああっ」
ウテナ「何をする!」
西園寺「ふざけるなアンシー。お前は薔薇の花嫁だ。つまり僕だけの花だ。なのに他の奴に頑張れとはどういうことだ」
アンシー「すみません、西園寺様」
ウテナ「馬鹿!こんなにされて、なんでヤツに従う!」
アンシー「西園寺さまが、今現在の決闘の勝者ですから、私を思いのままに出来るのです」
ウテナ「なんだよそれ・恋人じゃなかったのか?」
西園寺「さ、始めようぜ」
ウテナ「よく分からないけど、ともかく、奴に勝てばいいんだな」
アンシー「気高き城の薔薇よ」
ウテナ「なんだ?また手品か?」
アンシー「私に眠るディオスの力を、主に応えて、今こそ示せ」
西園寺「世界を革命する力を!」
ゴーンゴーンゴーンゴーン
(♩)
カキン!カキン!
西園寺「はっはっはっは」
ウテナ「くっ、くっ」
西園寺「はっはっはっはっはっはっは
なかなかやるじゃないか。女の子にしてはか弱いお姫様を助ける王子様のつもりか?フッフッフッフッフッフはっ!」
ウテナ「!まさか
その手品の剣、本物なのか?」
西園寺「驚いたな。なんの仕掛けもないただの竹刀で、このディオスの剣に挑んでくるとはね」
ウテナ「ディオスの剣?」
西園寺「ディオスの剣を知らないのか?君は何者なんだ?興味深い存在だ」
ウテナ「まだ、勝負はついちゃいない」
西園寺「確かに。お望みなら、一突きで胸の薔薇を血に染めてあげよう。命をかけてぼくに向かってくる勇気が、もし君にあるんならねぇ。お姫様を救う白馬の王子様。フッフッフッフッフッフ」
ウテナ「はーっ!」
王子「たった1人で、深い悲しみに耐える小さな君、その強さ、気高さを、どうか大人になっても失わないで」
西園寺「何!?」
ウテナ「はーっ!」
アンシー「ああっ!」
西園寺「馬鹿めー!」
ウテナ「やー!」
西園寺「はー!」
西園寺「そんな……僕が、負けた……はっ、アンシー」
アンシー「ごきげんよう、西園寺、先輩?」
ゴーンゴーンゴーンゴーンゴーン
桐生「意外な展開だ。あの子、確か中等部の子だったないいね、ベイビィ。俺のハートに火をつけたぜ」
ウテナ「あーあ。なんだかヘンテコな目に遭わされたなー。一体何だったんだ?もう早く忘れよう
あ?君は」
アンシー「お待ちしておりました、ウテナ様。私は薔薇の花嫁。今日から私は、あなたの花です」
次回予告
ウテナ「明日の放課後、決闘広場でリターンマッチだって?その生徒会の規則に逆らうものは、学園に居られなくなるって本当か?」
アンシー「いいんですか?ウテナ様。もう決闘は受けないんじゃなかったんですか?」
ウテナ「わざと負けるさ。それで問題はないわけだ」
アンシー「ええ、お好きなように」
ウテナ「次回、少女革命ウテナ 誰がために薔薇は微笑む」
アンシー「絶対運命黙示録」
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